◆擬音語じゃない”bomf”
ペンケースが修の頭にぶつかった時の効果音は、日本語版では「ボスッ」ですね。”bomf”は単純に、英語版の擬音語なのかなと思ったら違うようです。
Urban dictionaryに下記の語義が載っていました。
※wikipediaのような投稿型辞書なので、内容が変わる可能性があります。
Short for "Balls On My Face," indicating extreme displeasure and annoyance arising from some situation
Also short for actual balls being on your face.
漫画では、ボールではなくペンケースですが、音的には似た音なので流用したという事でしょう。
◆suck
3バカ2号が”you suck!”と言っていますね。ここでの"suck"は自動詞で、「むかむかさせる、最低である」という意味です。ちなみに、ロングマンでの語義は以下の通りです。
suck
spoken not polite used when you dislike something very much or think something is very bad
◆~だと思われている、~する事になっている"be supposed to do"
これまた、お馴染みの表現ですね。"suppose"が単独で「~だと考える」という意味の他動詞なので、その受動態と考えればわざわざ熟語として扱う必要はないです。ただ、頻繁に受動態で用いられるので、一つの熟語や慣用表現のように扱われているという事ですね。受け身で用いられる事が多い動詞はその形で、覚えてしまうのも手です。日本人は英語で受動態を多用しすぎるという指摘がありますので、”be supposed to”のような慣用表現以外は受動態を用いないというのも一つの手かも知れません。少なくとも、ネイティブは日本人ほど受動態を使わないという事実を知っておくだけでも良いかと思います。
さてさて、本題の”You were supposed to catch that.”ですが、過去形で用いられてますね。この場合、物事が期待通り運ばなかったことを含意します。つまり、「お前がそいつを取ることになっていたが、取らなかった」と非難しているわけですね。
◆動詞+副詞の熟語では、代名詞は間に挟む、”give it back”
男子生徒が”Give it back!”と言ってますね。”give back”は「返す」という熟語ですが、このように、動詞と副詞の熟語では、代名詞は間に挟むというルールがあります。慣れれば、使いこなせますが、慣れないと難しいので意識して読んでいきましょう。
なお、”back”という副詞が付いている以外は普通の”give”と同じなので、SVOでも、SVOOでも使えます。その際の使い訳も、
Chapter 1 その4の”leave”と同じなので、気を付けて下さい。
"give the book back to him"であれば”him”に重点が置かれますし、”give him the book back”であれば”book”に重点が置かれます。
◆カツアゲの定番、”fork over”
男子生徒の嘆願を無視して、3バカリーダーが修に”fork it over”と言っています。ここでも、代名詞は動詞と副詞に挟まれていますね。一度に覚えきれなくても安心して下さい。このように基本的な事は何度も出てきます。何度も繰り返していくうちに、そのうち慣れます。逆に何度も出てこない表現は、基本ではないので重要視しなくても大丈夫です。
さてさて、"fork over"ですが、これは「(お金など)をしぶしぶ手渡す、支払う」という意味です。他に”fork out”、”fork up”という表現もありますが、意味は同じです。”fork out”は、パス単1級に載っているので、かなり難易度が高い熟語と言えるでしょう。渡すという意味だけなら、”give”や”hand”といった動詞で代用できるかも知れませんが、しぶしぶというニュアンスを出すには”fork over”という表現が必要なんですね。もちろん、”unwillingly”や”reluctantly”のような副詞で、それらを表現することも可能なのですが、動詞だけで様態を表せるというのが英語なんですね。この辺は、さきほどの「歩く」のバリエーションに通じる部分ですね。
◆まだまだあるよ間投詞、”huh”
ここで修が立ち上がって、2号の前を横切ります。そして、修の予想外の行動に対する2号の反応が”Huh?”です。元の日本語版では「お?」となっていますが、正にそんな感じの意味です。ロングマンでの語義は下記の通りです。
huh
used to show that you have not heard or understood a question
ここでは、修が何かを発言したわけではありませんが、修が立ち上がった理由が2号は分からないので、その気持ちを表している感じですね。
◆そこそこ、まだまだある擬音語、擬態語、”Shp”
”shp”は
Manga studies のSFX glossaryによると主に「すくっ」という擬態語に相当する単語らしいです。
前回説明したように、本来英語には擬態語がないので、これらの多くは最近の造語でしょう。こういうのって誰が作ってるんでしょうね?日本の漫画の翻訳が商業化されるに連れて、少しずつ標準化されていったのでしょうか?非常に興味深いです。
原作の日本語版の表記では「ずいっ」なっているので、「すくっ」よりは力強さが感じられますね。この辺の感覚の違いは英語ネイティブには恐らく難しいんでしょうね。私も日本語ネイティブですが、論理的には説明できません。敢えて言えば、濁音の方が力強い感じがするというぐらいですね。翻訳者の方はこの辺の事を理解しつつも、適当な訳語が見つけられず近い擬態語である”shp”を採用したんじゃないかと思います。
◆まあまあ、まだまだある擬音語、擬態語”tnk”
ペンケースを取り返してあげた修はそのまま”tnk”とイスに座ります。
SFX glossaryだと「ぼそっ」という訳になっていますが、場面と全然合ってませんね。う~ん、英語が日本語の"onomatopoeia"に追いつくのは少なくても10年以上はかかりそうです。なので、私の訳では日本語版の「ガタン」をそのまま当てました。
◆かっこいい”cool”
”cool”は「冷たい」ではなく「かっこいい」という意味ですね。今は亡きウェップシステム社の名作スノーボードゲーム「クールボーダーズ」をイメージすると"cool"=「かっこいい」のニュアンスが掴みやすいかも知れません。間違っても、某レンタルボディガードはイメージしないで下さい。「かっこいい」というイメージがしにくくなってしまいます。
全然、関係ありませんがウェップシステムはるろうに剣心の和月先生が絶賛しているアクションゲーム「ライジングザン」のメーカーでも有名です。
◆間投詞、”Fwee”
手持ちの辞書には載ってませんでしたが、
Urban dictionaryには載っていました。
A word used to describe something entertaining, pleasing, enjoyable, inevitable, invulnerable, immortal, amusing, diverse, complex, and anything else that leaves a happy effect on one's face.
日本語のヒューと同じ感覚で、ポジティブにもネガティブにも使えそうですね。ここでは、2号が修の行動に対し「カッコいい」と言って茶化してる感じですね。それにしても、何度見てもイラッとする顔ですね。どこか磯辺衛に通じるものを感じます。
◆dude
"dude"は男性を指す単語ですね。ここでは、修に対し「野郎」とか「こいつ」みたいな感じに悪い意味で使われてますが、"a real cool dude"のように、良い意味でも使われます。
◆感嘆文
”what a downer.”は省略された部分を補足すると”What a downer you are.”です。感嘆文は、女性言葉としたり顔で説明してあるサイトもありますが、少なくとも"what"に関しては男性が使っても良さそうです。”how”の感嘆文は知りません。しっかり調べたわけではありませんが、シットコムの「フレンズ」を見てる限りでは、”how”は女性が使うケースが多い気がします。今後、男性が”how”を使うケースが英語版ワールドトリガーの中で出てくるか注目したいです。
今回の修のセリフは”…”のみでした。orz