◆定冠詞”the”の用法
女子生徒の”Where's the teacher?”という質問に対して、”I bet she's taking care of the transfer student.”と回答しています。2回"the"が出てきますね。"the"は日本人にとって難しいですね。私にとっても極めて苦手な分野です。
これに関しては、Roger Brownというハーバード大学の偉い学者さんが「定冠詞を使うのは話し手と聞き手の認識が一致しているときだけ」と単純明解な説明をしております。私自身は原著を読んだ事がないのですが、日向氏がその論文を元にしたブログを書かれているので、リンクを貼っておきます。
http://www.alc.co.jp/business/article/hinata/2014/05/2014.html
これをベースにして考えると、上記の女子生徒2人のやり取りも解釈しやすいですね。話し手は”Where is the teacher?”と”the”を使う事で聞き手に対して、「あなたもよく知っている」先生というのを示唆しています。なので、聞き手の女子生徒は「私と話し手で認識が一致する先生ということは、担任の先生のことだな」と分かるわけです。だから、担任である水沼先生を指す”she”という語がすぐに出てくるんですね。
勿論、ネイティブは私が書いたような事を頭で考えながら話しているわけではありません。呼吸をするかのように、無意識に使い分けています。そんなバカなと思うかも知れませんが事実です。そして、実は我々日本時も無意識に似たような事をしているという驚愕の事実があります。「日本語には冠詞がないから、そんな面倒な事はしていない」と思いますか?確かに、日本語には冠詞はないのですが、情報の新旧を伝える機能を別の単語が担っています。それは助詞の「が」と「は」です。
突然ですが下記の文の空欄に「が」か「は」を入れてみて下さい。
昔々、あるところにおじいさんとおばあさん( 1 )住んでいました。ある日、おじいさん( 2 )山へ柴刈りに、おばあさん( 3 )川へ洗濯に行きました。
(1)には「が」を、(2)と(3)には「は」を入れたんじゃないでしょうか?(1)では新情報を提示し、(2)(3)では既に提示済みの旧情報である事を聞き手に伝達しています。我々日本人は、話す際に文法を難しく考えてませんよね。 しかし、無意識のうちに明確に使い分けているんです。そして仮に「が」と「は」が逆になった日本語を聞いたら、意味は分かるかも知れないですが、もの凄い違和感を感じるでしょう。
私は英語ネイティブではないので分かりませんが、”a”と”the”についても英語ネイティブにとっては、「が」と「は」に似た感覚なんじゃないかと思います。じゃあ、我々日本人が”a”と”the”を使い分けるにはどうしたら良いか?それは、ひたすらどんな冠詞が使われているかを意識して英文に触れる事です。よく言われる聞き流し、英語のシャワーは、文法理解という意味では成人した人間にはほとんど意味がありません(リスニングには、ある程度効果があると思います)。常に、なぜ”a"が使われているのか、なぜ”the”が使われているのか、なぜ”無冠詞”なのかを意識していくと、少しずつ慣れていきます。時には根拠を説明できないものもあるかも知れません。それでも、調べて苦労する事で記憶が定着します。そして、似た事例に何度か出会うに連れ、少しずつ理解出来ていきます。
”I bet she's taking care of the transfer student.”の"the"も同じですね。恐らく、事前に転入生が来ることがアナウンスされていたのでしょう。女子生徒2人は「遊真という人物」を指しているのではなく、「こないだ先生が話していた転校生」のことを指しているわけです。
◆自信たっぷりに意見を述べる”bet”
”bet”は元は「賭ける」という意味の動詞ですね。そこから転じて、賭けても良いぐらい確信を持っている時にも”bet”が使われます。
以下、ジーニアスからの引用です。
Sean bet that I wouldn't pass my exam.
ショーンは私が試験に受からないと断言した。
また、ロングマンの語義は下記の通りです。
bet
2 I bet/I'll bet spoken
used to say that you are fairly sure that something is true, something is happening etc, although you cannot prove this
◆単数扱いの”nobody”
四ッ谷君は”Nobody transfers into Mikado city.”と言っています。”nobody”は単数扱いなので、”transfers”と三単現のSを付けるのを忘れないようにして下さい。
◆理解する”see”
四ッ谷君の発言に対し三好君も”I can see people transferring out.”と同意を示しています。ここでの"see"は「理解する・分かる」という意味ですね。「なるほど、分かったよ」という相槌として、”I see.”とか”I can see what you mean.”がよく使われるので、お馴染みですね。これらの決まり文句以外でも「理解する」という意味で使えるという点はおさえておきたいですね。ついつい、日本語につられて”understand”とか使いたくなりますが、グッと堪えて”see”を使ってみましょう。
◆所属・従事・活動の前置詞、”in”
三好君が続けます。”Maybe they're in border?”ここでの"in"は所属・従事・活動を表す”in”です。ジーニアスからいくつか例文を挙げます。
be in the navy 海軍に入っている
be in business 商売をしている
be in politics 政治に携わっている
He is in building [advertising]. 彼は建設[広告]関係の仕事をしている
「関係している」という日本語につられて、"be related to"とか、”be involved with”とかを使いたくなりますが、シンプルな表現の方が自然な英語ッポイですね。いや~、本当に勉強になります。
◆全力で、まだまだある擬音語、擬態語”Perk”
お次の擬態語は「ピクッ」に相当する”perk”です。この単語は、擬態語ではなく、元は動詞です。"perk up"という形で使われます。ロングマンでの語義は下記の通り。
perk up
to become more cheerful, active, and interested in what is happening around you, or to make someone feel this way
ここでは"interested in what is happening around you"の感覚がドンピシャリですね。すぐ近くの席の三好君の発言に、ピクッと反応している感じが感じられますね。
このように、日本語漫画の英訳版では、相当する擬態語がない場合に相当する動詞を当てる場合がよくあります。繰り返しになりますが、「歩く」を表す動詞は色々あります。これらのように、様態を表す副詞を使うのではなく、様態を含んでいる動詞を使う事が頻繁にあるというのが英語の一つの特徴ですので意識して学習していきましょう。
や~~~っと、修のセリフが出ました!!いや~、本当にここまで来るのに長かった!!実に12回の解説で初セリフです。しかし、やっと出たと思ったら、次回から場面転換で焦点が遊真に移るのでしばらく出番なしwwwまあ、修らしいと言えば修らしいかも。